
はじめまして。今回から「失敗の法則から学ぶ~宿経営者の仕事大全」というテーマで執筆させていただく、旅館クリニック代表の孫田猛と申します。どうぞよろしくお願い致します。
初めに少し自己紹介をさせていただきます。私は旅館経営コンサルティングの世界に入ってから約40年。「旅館クリニック」という名前が示す通り、旅館経営者のための町医者的存在という立ち位置でのコンサルタントです。
どうも調子が悪いという患者様(旅館経営者)には、まず診察を行い、悪い個所を見つけ、直すための処方箋を描き、全快というゴールに向かって治療・伴走するという毎日を送っています。
このような活動を日々行っている地味なコンサルタントが、なぜ今回執筆に至ったのか。
これまで縁あってお伺いしたお宿の中には、マスコミに登場するような有名なところではなく、どちらかというと目立たない普通のお宿が大部分でした。
当たり前のことですが、そこには必ず経営者がいて、宿の従業員そしてお客さまがいます。まぎれもなく宿の数だけ宿経営が日々営まれています。そこに一歩入れば、外からは見えない問題が必ずあり、経営者はほかの誰にも相談できずに、悶々とその問題解決に悩み苦闘している姿があります。
個々の宿における経営は、その宿の経営者が全責任をもって解決しなければ、誰も助けてくれません。だから、経営者が間違った意思決定をとってしまうと、取り返しのつかないことになってしまいます。
宿の経営者に限らず、中小企業経営者は成功者の体験や、はやりの経営戦略やマーケティングの手法を取り入れようとします。しかしそれですんなりうまくいった例はあまり聞いたことがありません。
成功したのにはそれぞれの背景があるのですが、残念ながらそこは割愛されている場合が多いのです。だから成功事例を表面的にまねたからといって、うまくいくとは限りません。
それよりも大事なことは、経営者がある間違いを起こしたら、その先の着地点が予想できるという、失敗の法則に直目すべきではないか、ということに気づきました。
宿の経営者は成功を意識する前に、まずは取り返しのつかない失敗をしないことのほうが100倍大事なのです。
私は旅館経営コンサルタントとしての40年間、数多くの失敗を目の当たりにしてきました。そこで得たものは、失敗した数々の事例を体系的に理解し、自分の経営に当てはめ、目前に迫っている意思決定は間違っていないかどうかを判断する能力です。
この一連の連載では、いわゆるかっこいい経営者は出てきません。とても実名は出せないような、生々しい現場での失敗の繰り返しが舞台です。
そしてその中から得た、失敗の法則をシリーズ化し、失敗事例とともに、そうならない具体的な方法を併せてご紹介してまいります。
繰り返します。成功を夢見る前にやることがあります。それは失敗しないことです。これこそが経営者の仕事であり、責任をもって取り組むことです。
経営者は生まれた時から後継者と決まっていた方が大部分です。中にはサラブレッドとして帝王学を身につけられた方も多いでしょう。後継者から経営者となってからは、あなたの意思決定や考え方に面と向かって異を唱える方や、本気で叱ってくれる人はいましたでしょうか?
経営者は孤独だといわれます。そうです孤独です。あなたがもし間違った方向に進もうとしていても、誰も止めにかからないからそう感じるのです。
そんな経営者のナビゲーターの役割になれたら、という気持ちで連載をスタートします。
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